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猫のワクチン接種を学ぼう!ワクチンの種類や値段、接種時期について

  2020/08/28
 

猫のワクチンは、犬よりも種類が多くありませんが、大きく分けて2種類のワクチンがあります。ワクチンを接種することで、感染症を予防したり、感染症にかかってしまった場合でも軽度で済ませたりすることができます。愛猫を病気から守るためにも、猫を飼う前にはぜひワクチンに関する知識をつけておきましょう。今回は、猫のワクチン接種の時期や回数、種類、値段などについてご紹介します。

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ワクチンとは

注射器

ワクチンとは、免疫システムを利用して感染症(ウイルスや細菌、原虫などが体内に侵入することで発症する病気)を予防したり、感染症にかかってしまった場合でも、軽度で済むようにしたりするものです。

人間をはじめ、猫や犬などの動物の体内では、ウイルスなどの異物が侵入するとこれを撃退しようとします。ワクチンは、事前に毒性をなくしたり、弱めたりした細菌やウイルスなどの抗原(病原体)を体内に入れることで、抗原に対する耐性(抗体)を作っておき、いざ抗原が体内に侵入した時に素早く対処できるようにするのです。

抗原には、ウイルスや細菌、原虫などがありますが、ウイルスに関しては薬で撃退することができず、抗体によってしか殺すことができません。そのため、ワクチンを接種することで抗体を作っておくことが大切なのです。

猫が持つ免疫力によっても差があるので、ワクチンによって100%病気を予防できるという訳ではありませんが、感染症にかかってしまった際の症状を軽減するというのがワクチン接種の目的と言えます。

ワクチンの種類

ワクチンには、「不活化ワクチン」「生ワクチン」「遺伝子組み換えワクチン」の3種類があります。

遺伝子組み換えワクチンは、日本ではあまり取り扱いがありません。ここでは、不活化ワクチンと生ワクチンについて比較してみます。

不活化ワクチン

不活化ワクチンとは、化学処理などによってウイルスや細菌を死滅させて毒性をなくしたものです。

【特徴】

  • 感染症を発症しづらい
  • アレルギー反応などの副作用がまれに出ることもある(アレルギーの原因はアジュバントという成分であると言われている)
  • 生ワクチンほど免疫力は強くならず、持続期間も短い

生ワクチン

生ワクチンとは、ウイルスや微生物などの毒性を弱めたものです。

【特徴】

  • 強い免疫力がつく
  • 副作用が現れる可能性が高い
  • 感染症を発症することがある

猫のワクチン

それでは、猫のワクチンについて詳しくご紹介していきます。

猫のワクチンの種類と値段

猫

猫のワクチンは、発症しやすい6種類の感染症に対するワクチンが開発されています。猫のワクチンの種類は、いくつかの感染症に対するワクチンを混ぜた「混合ワクチン」と、一つの感染症に対する「単体ワクチン」に分けられます。

ワクチン接種にかかる費用は、動物病院によって異なるので、ここでは必要な費用の目安をご紹介しておきます。

混合ワクチン

混合ワクチンは、猫がかかりやすい数種類の感染症を防ぐワクチンを組み合わせたものです。予防できる感染症の数に応じて、3・4・5・7種の混合ワクチンがあります。

最も一般的な3種混合ワクチンは、コアワクチンと呼ばれ、接種が推奨されているものです。

[3種] 猫ヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎)・猫カリシウイルス(1種類)・猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症/猫伝染性腸炎)
[4種] 3種+猫白血病ウイルス感染症
[5種] 4種+クラミジア感染症
[7種] 5種+猫カリシウイルス(2種類)

※猫カリシウイルスという感染症には、多くの型があり、3種と4種混合ワクチンでは1種類の猫カリシウイルスを、そして7種混合ワクチンでは、3種類の猫カリシウイルスを予防できます。

【値段】

種類 値段
3種 4,000〜6,000円
4種・5種 5,000〜8,000円
7種 7,500〜8,000円

単体ワクチン

単体ワクチンには、白血病ワクチンと猫エイズワクチンの2種類があります。

白血病ワクチン

猫白血病ウイルス感染症を防ぐための単体ワクチンです。感染した猫に咬まれたり、舐められたりすることで感染し、この病気にかかると食欲不振や体重減少、下痢、貧血、口内炎などの症状が出ます。

白血病ワクチンは、屋外に出る猫や、他の猫が屋外から入ってくる家に住む猫、感染した猫が同居する家に住む猫など、感染する危険性のある猫だけが接種すれば良いとされています。

【値段】 2,500〜4,000円

猫エイズワクチン

猫エイズウイルス感染症(猫免疫不全ウイルス感染症)を防ぐための単体ワクチンです。交尾をしたり、猫エイズを持つ猫とのケンカで咬まれたりすることで感染し、感染すると下痢やリンパ節の腫れ、口内炎、鼻炎などの症状が現れます。

猫エイズワクチンは、2002年にアメリカで使用が認可され、日本では2008年8月から「フェロバックスFIV」というワクチンが発売されていましたが、2012年7月で製造、販売中止となっています。

猫エイズウイルスには、遺伝子構造によって5つのタイプが存在しますが、これに対して猫エイズワクチンが効くのは3タイプだけであり、ワクチンを接種しても、全く効果がないということもあります。

白血病ワクチン同様、室内飼いであり、外にいる猫との接触のない猫であれば、感染のリスクは低いので、接種しなければならないワクチンではありません。

【値段】 2,500〜4,000円

猫のワクチンの接種時期と回数

猫のワクチンの接種時期と回数について、子猫の場合と成猫の場合に分けてご紹介します。

子猫の場合

特にワクチンの接種が必要な子猫

生まれてすぐの子猫には、病気に対する免疫力がありません。子猫は、母親の初乳(子猫を産んでから1〜2日間出る母乳)を飲むことで母親の抗体(移行抗体)を取り入れ、免疫力を付けます(受動免疫)。

しかしその免疫力は徐々に弱まり、生後56日頃に自然消滅してしまいます。特に子猫にとっては、感染症を防ぐためにワクチン接種が必要なのです。

子猫の場合、初乳を十分に飲んだかどうかによって免疫力の強さが異なるため、ワクチン接種の時期はそれぞれ少しずつ違ってきます。ワクチンを接種する時は、獣医さんとワクチンの接種計画(ワクチネーションプログラム)を立て、それに基づいてワクチンの接種を行っていきます。

初乳を十分に飲んでいる場合、最初のワクチン接種は生後56日(8週齢)頃に行います。ワクチンを接種した際に母親からもらった抗体が残っていると、子猫自身は抗体をつくっておらず、母親の抗体が働いてワクチンを排出してしまうため、生後84日(12週齢)頃にもう一度ワクチンを打ちます。

初乳を飲んでいない場合には、感染リスクが高いので、生後4週齢頃からワクチンの接種を開始することもあります。また、母猫が予防接種を受けていなければ免疫がなく、子猫も抗体を受け取ることができないので、その場合にも早めにワクチンを打つことがあります。

2回目のワクチン接種が終われば、それ以降は1年に1回のワクチン接種を行っていきます。

成猫の場合

成猫の場合は、健康であればいつでもワクチンを接種することができます。確実に免疫力を付けるために、最初に接種してから、およそ1ヶ月後に2回目の追加接種をします。

猫が妊娠している場合は、基本的にワクチン接種はできません。抗体は、ワクチンを接種してから少なくとも1~3週間ほどで完成します。そのため、交尾の3週間以上前にはワクチンを接種しておきましょう。

猫のワクチンを打つ体の部位

猫

猫の背中や肩甲骨のあたりに注射をすることが多いですが、最近では太ももや後ろ足、しっぽの先に注射することもあります。

そうすることのメリットとしては、悪性腫瘍が出来てしまった場合、背中よりも太ももや後ろ足などの方が切除(断脚)が簡単であることが挙げられます。ですが一方で、太ももや後ろ足の方が強い痛みを伴うというデメリットもあります。

また、ワクチン接種の際に猫の体の同じ箇所に注射をすると肉腫ができやすいため、注射する箇所はなるべく重ならないようにします。前回のワクチン接種で、体のどの部位に注射したかを飼い主が自分で記録しておくと安心です。

猫のワクチン接種の注意事項

次に、猫のワクチン接種についての注意事項について、接種前と接種後に分けてご紹介します。

ワクチン接種の前

免疫力が低下していると、ワクチンの接種によって感染症を起こしてしまうこともあるので、ワクチンを接種する前日の夜からは、特に注意して猫の様子を観察しておきましょう。

食欲がない、ぐったりしている、下痢をしているなど、体調に不安な点がある場合は、ワクチン接種の日程を変更するようにしてください。

特に問題がなさそうであれば病院に行き、獣医さんが診ても問題がなければワクチン接種を行ないます。

ワクチンを接種してから体調が悪くなった時などに速やかに対処できるよう、ワクチンは午前中、かつ翌日も診察している曜日に接種するのをおすすめします。また、ワクチン接種後に異常が現れた経験がある場合には、事前に獣医さんに伝えておきましょう。

ワクチン接種の後

猫

ウイルスの毒性を弱めたり、なくしたりしているとはいえ、ワクチンは異物であることに変わりはないので、副作用や副反応が出ることもあります。

そのため、ワクチンの接種後は、しばらく猫の様子を観察しておきます。副作用(副反応)が現れた時は、すぐに病院に連絡するようにしましょう。

また、接種後2~3日は、激しい運動やシャンプー、交配などは避けて安静にさせるようにしてください。接種後2~3週間は、まだ抗体が完成していないので、他の動物と接触させたり、感染のリスクがある場所に連れて行ったりするのは避けた方が良いでしょう。

どんな副作用がある?

ワクチン接種後の副作用は一過性のもので、たいてい1~2日で治まりますが、以下のような副作用が見られた時は、獣医さんに連絡して相談してみましょう。目安として、24時間以内に収まる症状であればあまり心配はありません。

  • 発熱(微熱)
  • 食欲不振
  • 元気がない
  • 軟便や下痢
  • 吐き気
  • 顔のむくみや腫れ(アレルギー反応のひとつ)
  • 顔や体のかゆみ(アレルギー反応のひとつ)
  • 呼吸の異常
  • 体温低下
  • 貧血
  • よだれ
  • 震え
  • 炎症性肉芽腫(ワクチン接種部位肉腫) ※1
  • アナフィラキシーショック ※2

※1 炎症性肉芽腫とは、ワクチン接種をした箇所が炎症を起こしてできる腫瘤(しゅりゅう)というコブのようなものです。約発症率が約0.01%のものですが、2~3週間経過しても症状が改善されず、しこりも見られる場合は、悪性の肉腫(ガン)に変化している可能性もありますので、獣医さんに診てもらうようにしましょう。

※2 アナフィラキシーショックとは、激しいアレルギー反応のことで、免疫システムが体内に侵入した異物に過剰に反応することで起こります。副作用としては最も危険な症状で、ショック死することもあります。発症率はおよそ0.01~0.05%で、接種後約15分~1時間以内にけいれんや嘔吐、呼吸困難、貧血、血圧の低下などを引き起こします。すぐに治療をしなければ命にかかわるので、ワクチンの接種後30分ほどは病院内や病院の近くで様子を見ることをおすすめします。

猫のワクチン接種の必要性

白黒の猫

日本では、猫のワクチンは1年に1回接種することが推奨されていますが、本当に毎年の接種が必要なのでしょうか。お金のかかることですし、アメリカでは2~3年に1回の接種で良いと言われていることもあって、毎年受けさせるべきかと悩んでしまうところですよね。

ですが、アメリカの場合は猫のワクチンの接種率が50%以上であり(日本は10〜20%)、日本とはウイルスなど病原体の蔓延状況が異なるので、全く同じようには考えられません。

また、猫に発症しやすい感染症の中には、効果的な治療薬がなく、ワクチンを接種して抗体を作る以外に対策できないものもあります。

感染した場合、他の猫への感染源となってしまうリスクもあるので、ワクチンに副作用がある点を考慮しても、毎年ワクチンを接種することをおすすめします。

ちなみに、外に出ることのない家猫でも、人がウイルスを持ち込んだり、ベランダに出た時や診察などで外出した際に感染したりする可能性があるので、ワクチン接種は必要です。

金銭面においても、ワクチン接種をせずに感染症にかかってしまった場合の方が、治療費がかさんでしまう可能性が高いので、やはりワクチンの接種は毎年しておいた方が良いでしょう。

また、毎年ワクチンを接種するメリットとして、獣医さんに猫の体質や性格をよく知ってもらうことができ、それが何か大きな病気や怪我をした時の役に立つということがあります。ワクチンの接種を毎年の定期検診のように捉えると良いかもしれませんね。

猫のワクチン接種をしよう!

猫の横顔

猫の場合、犬とは違って法律で定められた必須のワクチンはありませんが、愛猫の健康を守るためには、猫のワクチンについて学び、必要なワクチンの接種を適切に行っていくことが大切です。

また、ワクチンの接種に副作用は付きものなので、ワクチンを打つ前後の愛猫の様子をしっかり観察し、異常が見られればワクチンの接種日を延期したり、獣医さんに相談したりするようにしましょう。

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